京の風物詩 鴨川納涼床への誘い 鴨川座談会

京都鴨川納涼床協同組合


TOP - 鴨川座談会

鴨川座談会

第九回鴨川座談会
第九回鴨川座談会 川床にはドラマがある
司会 武部宏
司会 武部宏
華道家元池坊次期家元 池坊 由紀
華道家元池坊次期家元
池坊 由紀
欧風料理 開陽亭 主人 別所 正一
欧風料理開陽亭 主人
別所 正一
割烹竹島 女将 竹島 正美
割烹竹島 女将
竹島 正美
料理旅館鶴清 若主人 田中 信行
料理旅館鶴清 若主人
田中 信行
FUNATSURU KYOTO KAMOGAWA RESORT 総支配人 土井 みゆき
FUNATSURU KYOTO
KAMOGAWA RESORT
総支配人 土井 みゆき

鴨川納涼床を支える人々が、川床や京都への想いを語る座談会。第9回目となる今年のゲストは華道家元池坊の次期家元、池坊由紀さん。異ジャンルの芸術家と生け花のコラボレーションをはじめ、日本文化振興や地雷除去キャンペーンなど、国内外で多様な活動をされています。川床の魅力や「おもてなし」の極意についての話題に花が咲きました。

川床にはドラマがある
武部: 池坊さんは、鴨川の床に、どんなイメージをお持ちですか。
池坊: 川床が出るとが夏が来たなぁ、というイメージですね。京都はこんな街中なのに、風流を感じる場所がある。素晴らしいことだと思うんですよね。たとえば東京の方だったら、自然に触れようと思ったら1時間か2時間くらい郊外へ行かなければ触れられないのに、京都は街中に、自然と融合したおもてなしの場があります。ここに京都人の知恵と歴史を感じますね。
武部: 何か床の思い出など、ありますか。
池坊: 京都人同士でもちょくちょく寄せていただいていますが、外国のお客さまやほかの都道府県のお客さまをお連れすると、喜ばれますねえ。普通でしたら涼しさを感じるのはエアコンの風なのですが、自然の風を利用して、しかも山を見たり川を見たりして風を感じるというのは、とくに外国の方には新鮮なようですね。
武部: どんなところが喜ばれるのですか。
池坊: 京都には自然があるのが当たり前で、そこでお食事するのも夏の風物詩として、季節の楽しみですが、外国の方にとっては目で風景を見て、お料理を見て、自然の風を感じて、川のせせらぎを聴きながらお料理を味わう、という五感をフルに使って京都を満喫できるっていうことが驚きのようで、非常に喜んでいただきます。
武部: 実際に川床を出していらっしゃる皆さんから、川床への取り組みなどお聞かせください。
竹島: 取り組みなどという大層なことは考えていませんが、川床シーズンとオフシーズンの一番大きな違いは北海道から沖縄まで、全国から来られることですね。お花見や紅葉のときは京阪神、近畿一円から来られるのですが、川床のときはお国言葉が飛び交います。日本全国の方が、夏は京都で川床を味わいたい、と思っていらっしゃるのがよく分かります。
武部: 川床シーズンは全国から。
竹島: そうですね。
武部: 別所さんからご覧になってどうですか。
別所: うちは洋食ですので、いすとテーブルでニース風のコートディナーなんですが、一番最初に川床を出させていただいたときは、今の川床の半分くらいの本当に突き出しただけの床でした。おばあちゃんがうちわでぱたぱたと風を送っていましたね。それが歴史とともに今のようないすとテーブルに変わりました。今も昔も全国からたくさんのお客さまが来られますが、「今年も来たけど、やっぱし風情は変わっていないなぁ。京都はええなぁ」とおっしゃっていただきます。毎年たそがれどきを狙って、決まった時間に決まったお席に来られる方も。年配の方ですが、今年も来れた、と満足して帰られます。
武部: 昔お料理も大切ですが、風景も大切なのですね。
池坊: そうだと思います。現代人は忙しいので、普段なかなかゆっくりと日がかげっていく様子を見るとか、変化していく山の色などを眺める時間がありませんよね。川床に少し早めに来ると、時間の経過を楽しむことができます。 生け花も、その完成した作品も大切なのですが、完成に至るまでのプロセス、時間の経過を楽しむ要素もあり、完成に至るまでの時間がとても充実した時間で、そこにも意味があるんです。
武部: 土井さんのところは、和のイメージの強い川床に、横文字で切り込んでいますよね。その意気込みなどお聞かせください。
土井: そうですね。京都、特に川床といいますと、和食というイメージが強いのですが、京野菜などを取り入れて京都をフレンチで表現させていただこうと。お客さまもお若い方から年配の方まで、来ていただいています。
武部: 田中さんはどうですか。
田中: うちはどちらかというと団体さんが多いですね。僕は料理ばっかりしていまして、それで料理で京都を考えます。京都はやっぱり海から遠いので、昔から川魚や生命力の強いハモを使うことが多いです。僕も伝統を受け継ぎ、できるだけハモなどを多く使うようにしています。ほかの地域ではハモを食べる機会がないということで、骨切りの技術も含めて、ハモは京都の食文化のひとつだと考えています。多くの方に味わっていただきたいですね。
武部: 田中さんのところは大勢収容できる川床なのですね。
田中: うちは200人くらい入るんですが、200人も対応したら、調理場とかもう戦争のような状態です。
竹島: 雨が降ったら大変ですね。
田中: そうなんです。
竹島: そっちをすぐ考えてしまうわ(笑)。
池坊: そうですね。雨が心配。
田中: 最初っからの雨ならいいんですが、突然の雨が一番怖い。
別所: そうそう。
田中: そうなったらもうお膳とか、お客さんに自分で持ってもらわないと。誰が誰のだか分からなくなります。
別所: 洋食はお盆とかお膳がないので、お皿が並んで大変です。
池坊: 私も一度ありました。お食事していたら雨が途中で降ってきて、慌ててバタバタとお部屋の中に。
田中: でも、それがまた床の良さっていうか。
土井: そうですね。
竹島: お客さまにどうお話ししたらいいか、お遊びもそうやと思うのですが、粋に、川床の雨まで楽しめるようになったら、「お客さま、川床のプロになられました」って(全員笑)、言って差し上げたい。最初は驚かれると思いますが、滅多にない経験ですので。
武部: むしろ喜ぶべきこと。
竹島: 雨は困りますが、雨が上がったときの喜びも、川床にはあると思うんですよね。
池坊: 本当に自然のことだからこればっかりは。逆にこれも風流と楽しめたら。
武部: 特技みたいな早業も見られますよね。あっという間に敷物を巻き取ったり(全員笑)。
竹島: 川床やからこそ自然に逆らえへんということを、私たち自身も感じたほうがよいのかもしれません。何でも技術が進んでいくと便利で快適ですが、変えられないものもあるということを、川床で経験させてもらっているのでは。
武部: 川床では自然を丸ごと受け入れて楽しんでもらいたい。
竹島: 私たちも実は自分に言い聞かせているんです(笑)。わーっ、今日雨っ、て本当は嘆き悲しんでいるのですが。自分でも楽しめるくらいの余裕ができたらなーって思います。
武部: 川床は北の二条から南の五条まで、実にいろいろな風景がありますね。
別所: 私共は四条大橋が近く、ライトアップした南座が望めます。9月後半は絶好のお月見スポット。お客さんにも是非見てもらいたい。今年は晴れるやろか、といつもドキドキしています。
池坊: 川床は、訪れる時季によって雰囲気が違ったり、見えるものが変わったりしますね。
別所: 今年はちょっと虫の音が少ないね。
池坊: 暑すぎたのでしょうか。
別所: お盆が済んだころには、必ずチチチチと鳴き始めるのですがね。夏は新内流しですね。昭和30年代後半から40年くらいまででしたが、情緒があっていいもんでした。
竹島: 大文字のときにお客さまが呼ばれて、新内流しをしたことがあります。川床の上は歌舞音曲が禁止ですので、川床の下でやっていただきました。昔ながらの新内流しを復活したい、というお客さまの声もありますね。
武部: 川床は歌舞音曲禁止?
竹島: マイクも高歌放吟も禁止です。気持ちよくなってうたい出されるお客さまもおられますが、お部屋のほうでお願いしています。
武部: そんな禁止事項など書いたパンフレットとか、あるのですか。
竹島: お店に向けての条例はありますが。
別所: そんなパンフレットがあったとしても、はじめからそんなものをお配りすると堅苦しくなりますね。
竹島: やはり、お客さまにタイミングよくお声を掛けるのが一番いいですね。
武部: 京都らしく上手に。
竹島: 京ことばはこういうときにとてもいいですね。注意するのも柔らかな感じで。お店の側はおもてなしのプロなのですから、これは止めてほしい、ということを気持ちよく相手に理解していただけるようにお話しするのもお仕事だと思います。
武部: 池坊さんはアーティストとしての立場から川床をご覧になって、ここはもっとこういうふうにしたらいいのに、ということなどありますか。
池坊: いえ、アーティストとかということもないんですが。川床だとほかのお客さまとの席が近いので、洛中洛外図ではないですが、昔ながらの、河原にいろんな人がいるような感じがして楽しいですね。自分たちのグループだけでなく、ほかのグループの楽しさも伝わってきて、マナーを守り、節度を保ちつつ、ひとつの空間をみんなで分かち合っているんだなぁ、という感じがするのが良いですね。
竹島: 記念日やお誕生日の方にケーキを用意しといて、といわれて、当日お出しするとそのお席だけでなく、床全体でお祝いする雰囲気になります。一体感がいいですね。川床ならではではないかなぁと。
池坊: そうですね。いろんな方がたまたま川床で同席しているのですが、何か共有感がありますね。
武部: 川床にはドラマがあるのですね。
土井: 私共は、実は結婚式の会場をさせていただいているので、本当に記念日に川床をご利用いただく方が多いですね。結婚記念日にお越しになったり、プロポーズの場所にされたり。
武部: 女性の方は知らないの。
土井: はい。私共だけ事前に知らされていて、もうドキドキです。サプライズのお手伝いをさせていただきまして、デザートのときにお花と指輪をお持ちし、そのまま4階のチャペルに上がられてプロポーズされました。大成功で私たちもうれしかったです。
武部: そのお二人はきっと結婚記念日ごとに来られ、やがてはお子さんと、お孫さんと来られるのでしょうね。
土井: そうなるとうれしいですね。こうやって京都の歴史や伝統が作られていくのですね。
竹島: それ(伝統)があって、私たちはお商売させていただける。京都はそういうところですが、池坊さんも、生まれながらにして歴史ある池坊の次期お家元として歩んでおられる。すごいですねー。
池坊: 京都は私だけでなく、そういう方が本当に多いので。京都は一代で大きくして儲けておしまい、じゃないんですよね。いかに次の世代にバトンタッチしていくか、の方が大切。だから町並みや景観、儀式が残ってきたのです。京都はそういう意識の集大成ですよね。
武部: 九十軒以上ある川床はそれぞれ個性豊か。お客さまもさまざまで、ひとりひとりに物語があります。
池坊: 極端かもしれませんが、それこそ何10年も前にお祖父ちゃんが食べたお料理を自分も食べたい、とか、同じ景色を見たい、とか、同じ空間の中で京都を味わいたいとか、川床はそんな願いを叶えてくれるのです。東京に行くとどんどん変わっていくものばかりで、不変のものを探すのは大変。たまには京都で何10年前と同じ月を見て、同じ時間の中でお食事をいただくのもいいんじゃないかと。
田中: いつも同じ、というのがいいんですよね。
武部: おもてなし、といいますが皆さん、どんなことを心掛けておられますか。
竹島: 今年の夏は特に暑いので、氷水で絞ったおしぼりをお出ししたら「京都は違うなぁ」と喜ばれ、「これだな」と思いました。
池坊: さりげない心配りが大切ですね。お客さまの立場に立って、さりげなく。
別所: 今こういうときに、自分やったらどうしてほしいか、ということですよね。
田中: 心って見えないけど、感じますもんね。伝わりますもんね。
土井: 私共は若いスタッフが多いので、22、3歳のスタッフに「おもてなし」と言ってもなかなか難しいものがあります。クッションをお出ししたり、冷たいものをお出しするときのスピード感は大切にさせていただいています。
武部: たくさんあるお店の中から4人の方にお越しいただいてお話をお聞きしたのですが、どうですか。
池坊: 今まで直接お店の方のお話を伺う機会はなかったので、本当に皆さん、京都を大切に思い、川床の伝統を大切にされているんだなと分かり、心強く感じました。
武部: これを機に、今まで以上にいろいろなお客さまをお連れください。
池坊: 世界中のお客さまをお連れしたいと思います。
過去の鴨川座談会 アーカイブス
第一回から最新の座談会をPDFで大公開中です。