京都の三大行事

「つろくする二人」って何?そんな二人の男女鴨川夏物語

  • 京のけったいコラム その壱

    鴨川のカップルのつろくするその座り具合をぼーっと床から眺めているだけで、それはりっぱな京の風物詩です。「つろくする」とは、京言葉で「つりあいの取れた」という意味で用いられますが、パーソナル・スペース=均等な距離感を保ちながら、いい頃合いで鴨川の河川敷に仲睦まじく並び、夕涼むカップルの姿は、実に微笑ましいものです。これが美男美女のカップルである場合、「つろくして、ええ二人やなぁ」ということになり、こんな場合も床からではちょっとした酒の肴となります。鴨川の川面を潜る風は、夜になるとそれは心地よい「涼」となり、ただでさえ熱い二人の仲をますます近づけてくれます。そんな二人をここに呼び寄せるきっかけがこの季節にはたくさんあるのです。

鴨川納涼床を「ゆか」と呼ぶ謂れと「かわどこ」との違い

  • 京のけったいコラム その弐

    納涼床の歴史ページにある歴史年表の写真資料をご覧頂くとその起源である、川の流れの浅瀬の中で床机を置いて涼を取る人々の姿が見てとれるはずです。大正時代の大掛かりな河川改修で中州が取り除かれ、また「鴨川河川敷一階専用並びに工作物施設の件」が通達され、納涼床の基準が定められるや、明治頃から立ち並び始めた高床式の今ある姿に統一されたのです。以来、床の由来となる「床机」の「床」の一字に、また高床式の床の語源を大切に、通称「ゆか」と呼ぶようになりました。大正時代は中期頃にその始まりを見せた貴船の川床(かわどこ)は、鴨川納涼床との違いを表そうと付けられた名称だとされています。地面から、あるいは川面から手が届くほど近いという情景から、本来の「床」=「とこ」という意味を強めるため「かわどこ」と呼ぶようになったのではないでしょうか・・・。ともあれ「鴨川納涼床」は、この町では「ゆか」とお呼び下さい。

耳にするけど実はよく知らない「鱧の落とし」って一体どんな意味?

  • 京のけったいコラム その参

    その昔、海に決して近くない京の台所は、ぐじや鯖に代表されるようにその難しい輸送手段から魚が珍重されました。中でも夏の間に脂をのせ、山陰沖や瀬戸内海から担ぎ運ばれる鱧は、少々のことで鮮度を落とさない生命力の強さから「食すと精がつく」「暑気払いにいい」とされ、今もなお「鱧の落とし」は値が張っても京都人にとっては、なくてはならない風物詩です。小骨が多くそのままでは口当たりがよくないため、 料理人の包丁捌き、いわゆる「骨切り」の技術が重要となるのです。ずっしり重い骨切り包丁で背皮一枚を残し、鱧の身約一寸に25ほどの切れ目を入れる腕前こそ、一人前の板場の証です。その鱧を比較的大きな鍋に放り込み強火で一気に茹で上げ、フワッと花が咲きほころぶようになれば今度は氷の入った冷水の中に落とし、旨味を凝縮します。湯引きした鱧を瞬時に冷水に落とすことから「鱧の落とし」と呼ばれてきました。梅肉や辛子酢味噌で頂く爽やかな味は正に、お口の中に涼風を誘います。別名「鱧祭り」と呼ばれる「祇園祭」の期間中は、正に旬の季節を迎えます。

先斗町「鴨川をどり」のシンボルで有名な川千鳥の紋章にまつわる話

  • 京のけったいコラム その四

    先斗町の初夏の風物詩といえば、「鴨川をどり」。これが始まったのは明治5年、大政奉還により、東京が日本の首都と定められて以来、京都の街はちょっと寂しくなってしまいました。そんな状況をなんとかして、再び京の街を盛り上げようと、平安神宮を中心とした岡崎界隈で開催されたのが、「第一回京都博覧会」でした。「私らもなんとかしたい」と立ち上がったのが、京都を代表する花街のひとつである先斗町。京都の繁栄を願う一大イベントの附博覧として、「第一回 鴨川をどり」が開催されたのです。美しく絢爛な華舞台、ドラマチックな舞踏劇はまさに京情緒の踊り絵巻。いまや京の初夏には欠かせない催しとなっています。そして、そんな「鴨川をどり」の季節になると先斗町のそこかしこで見られる川千鳥の紋章。これは「第一回 鴨川をどり」が開催された明治5年に創案されたもの。冬の鴨川では、運が良ければそんな千鳥が川辺をちょこまかと歩き回る姿に出会えるかもしれませんが、初夏もそんな愛らしい千鳥を眺めていたいという思いからデザインされたものかも知れませんね。

鴨川納涼床で料理を楽しむ時に禁じられている行為とは?

  • 京のけったいコラム その五

    柳並木に響く三味線の音色・・・時代劇だとそんなシーンをよく見かけます。昔ながらの情緒が色濃く残されている鴨川納涼床でも新内流しの三味線の音色が楽しめる時代がありましたが、今は鴨川納涼床では、いっさいの鳴りものを禁じています。盆地特有の厳しい暑さが続く京の夏。しかし、都の人々は見た目に涼やかな料理を味わいながら、陽が落ちてから川面を撫でるように吹く涼風はもちろん、茜色から藍、そして漆黒へと移り行く空の色、サラサラと流れる鴨川や禊川の水の音など、互換すべてを使ってかすかな涼を感じ、楽しんできたのです。そこに鳴りものの音が響き渡ってしまっては、せっかくの風情が台なしになってしまうというものです。そのようなことから、現在は床での鳴りものは一切許されていないのです。鴨川納涼床では自然の音色が一番よく似合うことを実感して下さい。

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